Kalax

LOST

Kalax

LOST

  • release date /
    2024-06-22
  • country /
    UK
  • gerne /
    dream-pop, dreamwave, retrowave, synthpop, synthwave
Light
Dark
Soft
Heavy
Clear
Noisy
Slow
Fast
Pop
Extreme

UKリバプールのシンセウェイヴ・アーティストKalax(Lee Blanshard)による4thアルバム。

まずはレビューにあたってシンセウェイヴについて軽くおさらい。シンセウェイヴは80年代のSF映画のサウンドトラックやビデオゲームミュージックをインスピレーション源にして、2000年中頃に誕生した音楽ジャンル。その特徴として、リバースゲートがかかったスネアドラム、リズミカルに脈打つシンセベース、レトロゲームを思わせるピコピコとしたリードシンセなどが挙げられます。言葉で説明するよりも、代表的なアーティストであるMiami Nights 1984の楽曲を聴けば、手っ取り早く理解できると思います。また、トロンやブレードランナーの影響を受けたサイバーパンク風のアートワークもこのジャンルならではの魅力ですね。

その後、シンセウェイヴは細分化され、様々な派生スタイルが生まれました。歌に特化したポップなものや、チルウェイヴを取り込んだアンビエント系、あるいはゴス〜ダークウェイヴに接近したホラー系、さらにはアグレッシブさを追求してインダストリアルメタルと融合したりと、驚くべき多様性を見せながら発展を続けています。その中でも特に夢見心地でロマンティックなものは、いつしかドリームウェイヴ(Dreamwave)と呼ばれ、ロサンゼルスのThe Midnightを筆頭に世界中で大きな人気を博すようになりました。

Kalaxは、Miami Night 1984のような伝統的なインストメインのシンセウェイヴでスタートし、3rdアルバム“Ⅲ”で多数のゲストボーカルを迎え、ロマンティックな感性に磨きをかけ、群雄割拠のドリームウェイヴ界でめきめきと頭角を現していきました。特にこのアルバムに収録されたOut of Timeはシンセウェイヴ史上トップクラスに切なく涙を誘う曲なのでオススメです。

さて、そんなKalaxの5年ぶりとなる本作ですが、再生ボタンを押せばたちまちキラキラとしたシンセが波のように押し寄せ、ネオンサインが煌めく夜のロサンゼルスへと誘ってくれます。まるでブレードランナーの世界に飛び込み、レプリカント、あるいはそれを追うデッカードとなり街を駆け抜けるような感覚が味わえることでしょう。さらに1時間20分という大ボリュームにより、VR体験のような圧倒的な没入感をもたらしてくれます。

また、本作の大きな変更点としてKalax本人がボーカルを披露している点も見逃せません。ちょっとハスキーで哀愁味のある声質が楽曲に深みを与えています。おそらくライブパフォーマンスを考慮した方向転換かもしれませんね。

残念ながら、現時点では日本でシンセウェイヴ系アーティストの来日ライブを目にする機会はほとんどありませんが、この記事がきっかけでシンセウェイヴの魅力に目覚める人が増え、いつか日本のプロモーターが興味を示してくれる日が訪れることを願っています。

シンセウェイヴ好きはもちろん、M83やSchool of Seven Bells、Mint Julepなどのエレクトロ系ドリームポップ〜シューゲイズが好きな方もぜひお試しあれ!