
Pale
Our Hearts In Your Heaven
Pale
Our Hearts In Your Heaven
- release date /2025-01-10
- country /Japan
- gerne /blackgaze, noise, post-black-metal, post-hardcore, shoegaze
東京のポストブラックメタル/ブラックゲイズ・バンドのデビューアルバム。
2018年のEPリリース以来、約7年ぶりの新作となります。メンバーはギタリストの渡邊氏を除いて刷新され、本作はNiiK(Vo/Noise)、Hirofusa Watanabe(Gt)、Takahiro Watanabe(Ba)、Kou Nakagawa(Dr)の4人編成で制作されました。
Alcestの幻想美やDeafheavenの光に満ちたサウンドとは一線を画したダークな路線が彼らの魅力です。ブラックメタルの狂気をハードコアの推進力でブーストし、荒涼としたメロディを爆発させるサウンドは、闇夜の雪原を疾走する蒸気機関車さながら。
そして本作の最大の特徴は、ボーカリストNiiK氏が操るノイズ。#1“Euphoria”でその真価が早々に発揮されます。まるで脳に直接電極を突き刺され、電流で焼かれるような強烈さで、映画『π』の主人公になった気分が味わえること請け合いです。それに負けじとボーカルは狂気じみたスクリームと、汚物をぶちまけるようなデスボイスを使い分け、「俺が人力ノイズだ!」と言わんばかりに圧倒的な存在感を放っています。さらにノイジーなギターに爆速のブラストビートまで加わって鼓膜がもう大変なことに。ええ、エクストリームミュージック好きには最高のご褒美です!
そんな過激なサウンドに浸っていると、#4"Almost Transparent Blue"で突如として透明感のあるギターが顔を出し、クリーンボーカルで歌い始めるではないですか。どことなくニューウェイヴやゴスのムードも感じられ、Amesoeursを思い出す聴き心地。しかし「甘い夢は終わりだ」とばかりに再び爆走。雷雲を抜けて天へと駆け昇るようなカタルシスをもたらします。Paleの新境地とも言える楽曲で、アルバム中盤のアクセントになっています。
続く#5 "Dakhme"では、再び狂戦士モードに突入。時速300キロで暴走するブルドーザーのようにすべてをなぎ倒していきます。#6"Lament"は悲壮なトレモロをかき鳴らしながら徐々にフェードアウトし、ラストの#7 "Shringavera" では、雪原で狂い叫ぶ男の姿が真っ白な吹雪に覆われていき、余韻たっぷりに締めくくられます。起伏ある構成で物語を想起させる手腕もお見事。
大衆化しつつあるポストブラックメタル・シーンに対するカウンターのように、アンダーグラウンドの領域をさらに拡張する形で進化を遂げた意欲作。ポストブラックやブラックゲイズは「ブラックメタル」がルーツであり、闇を孕んだ狂気こそが真髄であると再認識させられます。4月25日からは東南アジアツアーも予定されており、彼らの美学が海外のリスナーにも衝撃を与えることを期待せずにはいられません。