Amira Elfeky

Surrender

Amira Elfeky

Surrender

  • release date /
    2025-03-28
  • country /
    US
  • gerne /
    alternative-metal, gothic-metal, grunge, nu-metal, shoegaze
Light
Dark
Soft
Heavy
Clear
Noisy
Slow
Fast
Pop
Extreme

LAを拠点に活動するアーティスト、Amira Elfekyの2nd EP。

コネチカット州出身のAmira Elfekyは、子供時代に兄たちから00年代のニューメタルを紹介され、DeftonesやLinkin Park、Evanescenceといったヘヴィなサウンドの洗礼を受けて育ちました。ティーンエイジャーの頃にはハードコアに傾倒し、10代後半になるとバスルームでギターを練習しながら、BandLabというアプリで作曲を始めたそうです。

18歳の時、後のプロデューサー兼マネージャーとなるTylor Bondarと出会い、自作の曲を聴かせたところ、彼は感銘を受け、無料で録音することを申し出たそうです。そしてセッションを通じて、彼女が探し求めていたサウンドに少しずつ近づいていきました。

その後、YouTubeで“Linkin Park Deftones type beat”と無作為に入力して最初に表示された曲を聴いて衝撃を受け、衝動的に制作されたのが初期の代表曲である “Tonight”。2023年7月初旬にTikTokへ投稿したところ、バズりにバズって数百万の「いいね」がついたそうです。これがAmira Elfekyの存在が世界に知られるようになった最初の出来事でした。そして翌年3月にリリースされたデビューEPは、ニューメタル・リバイバルの体現者として世界各国から絶賛されたのは記憶に新しいところ。TikTokの投稿から1年もかからずにこれほど大きな存在となるとは、本当に驚くべきサクセスストーリーです。

こうして振り返ると、ヒットの経緯がWispとよく似ているのも興味深い点ですね。次世代のスターがTikTokを起点にブレイクするのはもはや一過性の現象ではなく、音楽業界の新たなスタンダードといえるでしょう。

デビューEPから約1年後にリリースされた本作は、共同制作・プロデュースにBring Me The Horizon、Pale Waves、Architects、Poppyなどを手掛けたZakk Cerviniを迎えて制作され、さらにヘヴィかつエモーショナルに進化を遂げました。

特に変化が感じられるのは#3“Forever Overdose”。ミステリアスなヴァースから轟音とともに一気に狂おしいほどの哀しみを爆発させたかと思うと、Amiraのスクリームを皮切りに超ヘヴィなブレイクダウンへなだれ込みます。この手法は他の楽曲にも見られ、作品全体のヘヴィな印象を強固なものにしています。よりヘヴィになったことで、Amira Elfekyの最大の魅力であるゴシック風のロマンティックなメロディがさらに際立っているのも好印象。

その結果、前作のシューゲイジーな雰囲気がだいぶ失われてしまいましたが、いくつかのメディアでは今もニューゲイズ(ニューメタル×シューゲイズ)として扱われていますし、ニューゲイズが一般的に浸透した今となっては十分シューゲイズ好きにも受け入れられると思います。

ともあれ、この素晴らしいクオリティを前に細かいジャンルの区別など些末なこと。ダークでヘヴィな音楽が好きな人にとって最高の贈り物であると保証します。本年度のベスト入り間違いなしの傑作です!

そんなAmira Elfekyですが、Download Festival 2025への出演が決定し、Bring Me The Horizonの全米ツアーのサポートに抜擢されるなど、今や飛ぶ鳥を落とす勢いで活動の場を広げています。Spotifyの月間リスナー数は、本作リリース時の80万から、わずか1週間で30万もアップし、あっさり100万超えを達成。この傑作を起爆剤に、ますます注目を浴びることは間違いないでしょう。

日本ではLOUD PARKの奇跡的な復活が話題をさらっていますが、今がAmira Elfekyを呼ぶ絶好のチャンスなんじゃないでしょうか? クリエイティブマンさん、新しい血を取り入れるためにもぜひご検討ください。できればDeftonesとLacuna Coil、Spiritboxもお願いします!(言うだけならタダ)

ちなみに本作では、カバーアートやミュージックビデオに『青』が多用されていることにお気づきでしょうか。特に“Forever Overdose”でブラウン管に映る映像に、Evanescence『Fallen』のカバーアートを連想した方も少なくないはず。

『Fallen』といえば、ゴシック界にパラダイムシフトを起こしたモンスターアルバムなのは皆さんもご承知の通り。

本作は『Fallen』へのオマージュ、あるいはリスペクトであり、「いつかEvanescenceと肩を並べるアーティストになる」というAmira Elfekyの決意表明なのかもしれません。今後リリースされるであろうデビューフルアルバムは、とんでもないことになりそうな予感がしますね。