
Urge
Here/After
Urge
Here/After
- release date /2024-11-15
- country /France
- gerne /coldwave, darkwave, gothic, post-punk, shoegaze
フランスのコールドウェイヴ・バンドのデビューアルバム。
エクストリームメタル・バンドPlebeian GrandstandのメンバーであるAdrien Broué(Vo)とSimon Chaubard(Gt)によってスタート。Hugo Dupuis (Dr), Clement Libes (Ba兼プロデューサー) とMathieu Félix (Gt)が加わり、5人編成でアルバムが制作されました。
音楽性をざっくり表現するならゴスとシューゲイズの混血種。深い闇を宿した退廃的なムードの中に、ギターがオーロラのように美しくたなびき、時に苦痛にうめくように、時にエモーショナルに歌い上げるボーカルが深い哀しみを刻みつける。
燃え尽きた流星たちが大地に降り注ぐような広大なサウンドスケープで盛り上がるタイトルトラックが白眉。近年メタル界からゴスやシューゲイズへ転身するケースが増えていますが、個人的には大いに歓迎です。
House of HarmやDrab Majestyのファンはぜひチェックしてください。

Painded Vein
Dripping Only Black
Painded Vein
Dripping Only Black
- release date /2024-11-15
- country /US
- gerne /alternative-rock, dream-pop, gothic, indie-rock, newwave, post-punk, shoegaze
シアトルを拠点に活動するマルチミュージシャンAndrea Fox Volpatoによるソロプロジェクトのデビューアルバム。
Andrea Fox Volpatoは、イタリアのバンドNew Candysのリードギタリスト兼バックボーカリストを務めていたほか、ゴシック/シューゲイズ・アーティストMØAAの共同プロデュース、ミックス、レコーディングも手掛けるなど、豊富な経験を持つミュージシャン。本作ではカバー曲を除き、Andrea自身が作曲、演奏、制作、録音を全て手がけており、10年間にわたるキャリアの集大成といえる作品となっています。
MØAAで見せた退廃的なサウンドは本作でも健在で、脈動するベースラインと仄暗い響きのギターにAndreaのマイルドな歌声が深い哀愁を添えています。ドリームポップやシューゲイズだけでなく、ニューウェイヴやゴシックロックが好きなリスナーにも刺さること請け合いです。
イチオシは#1“Lay down”。甘い夢を浮かべながら虚しさに沈んでいくようなメランコリックなナンバー。
#2“Where Is My Soul?”はロマンティックなメロディをまといながらアップテンポにドライブするロックナンバー。HIMやTo/Die/Forといったフィンランド勢に通じる味わいもあり。
#3“Something In The Way”はNirvanaのカバー。より夜想的で美しいアレンジとなっているので、ぜひ原曲と聴き比べてみてください。
#7“Kick That Desire”ではMØAAのJancy Buffingtonが幽玄な歌声を披露。アウトロではAndreaの呪文のようなポエトリーリーディングが木霊し、暗い森の奥へと誘われるような感覚が味わえます。
なお、Painded Veinは本作のリリース後にイタリアを巡るツアーも行ったそうです。いつかMØAAと一緒に来日してほしいですね!

Bosses
Many Worlds
Bosses
Many Worlds
- release date /2024-11-15
- country /US
- gerne /alternative-rock, grunge, shoegaze
イリノイ州シカゴを拠点に活動するシューゲイズ・バンドのデビューEP。
Harlee Young(Gt/Vo)を中心に2022年に結成されたBossesは、90年代オルタナをインスピレーション源にSuperheavenやMicrowave、Nothing、Bleedといったバンドから影響を受けたヘヴィなサウンドを展開し、自身を『ヘヴィシューゲイズ』と称しています。
特筆すべきは前述のバンドたちに匹敵するレベルのヘヴィで骨太なサウンドと、それに埋もれることなく存在感を放つHarleeのボーカルです。特に低めのトーンの歌声がもらたす陰鬱なムードは、Slow CrushやIress、Graywaveといったダーク系ボーカリストにも引けを取りません。全曲お気に入りですが、長尺で没入感のある#4“Transcendental”を推しておきます。
そんなBossesですが、結成から2年という短い期間ながらすでにSoul BlindやReznのサポートを務めており、3月にはSungazeとの対バンが決まっています。今後の活躍がますます楽しみですね。ヘヴィシューゲイズ好きは早めにチェックしておくが吉です!

Scarlet House
Homecoming
Scarlet House
Homecoming
- release date /2024-11-22
- country /US
- gerne /grunge, nugaze, shoegaze
ノースカロライナ州シャーロットのScarlet Houseは、2021年に活動を開始し、TikTokを中心に支持を集めて急成長を遂げている新進気鋭のソロアーティスト。本作がデビューアルバムとなります。
彼の作風はグランジ〜ニューメタル由来のヘヴィなサウンドにシューゲイズを融合したニューゲイズ系で、HipHopやR&Bの影響も感じられる点はCold GawdやNovulentを彷彿とさせます。彼らに比べるとギターは幾分ドライな音造りなものの、情感豊かで艶があるボーカルとの対比が秀逸で、Scarlet Houseの大きな武器となっています。
また、全体的にヘヴィなナンバーが並ぶ中、歪みを抑えたインディーポップ風の#4"Slowing Down"が良いアクセントになっています。この曲はストーリー仕立てのMVも素晴らしいのであわせてチェックしてください。Scarlet House - Slowing Down / Ghosts (Official Music Video)
本作で新たに披露された"Blind"、"Set Me Free"、"Let Go"の3曲はいずれも音の厚みがぐっと増していて、サウンドプロダクション面での進化も窺えます。群雄割拠のニューゲイズ界において、WispやNovulentに継ぐ存在となるか注目ですね。

Mondaze
Linger
Mondaze
Linger
- release date /2024-11-22
- country /Italy
- gerne /grunge, nugaze, shoegaze
イタリアのシューゲイズ・バンドMondazeの2ndアルバム。
結成の経緯について、Margherita Mercatali (Gt)がインタビューで2014年にGuilty of EverythingツアーのNothingを観てシューゲイズに目覚めたと語っています。彼女はファズやリバーブを多用し、実験を重ねた結果、1stアルバムの名曲『Words Undone』が誕生しました。この曲に命を吹き込むためにメンバーを募り、最初にMatteo Vandelli (Gt/Vo)、次にMichele Leonardi (Dr)、最後にLorenzo Capacci (Bass)が加入し、4人編成のバンドとなりました。ちなみにMondazeは「月曜日の憂鬱さ」を表すスラングだそうです。あの感覚はイタリアでも共通なんですね。
彼らはパンクやメタル、グランジをルーツに持ち、The Smashing PumpkinsやSwervedriver、Ride、DIIV、Nothing、Cloakroomなどを影響源に挙げています。そして自ら「ヘヴィシューゲイズ」を掲げ、吹雪のように激しく吹き荒れるギターと、陽炎のように揺らめく繊細なボーカルが調和させ、比類なき陶酔感を生み出しています。
また、ヘヴィな音像を支える力強いドラムも重要な要素の1つ。タイトルトラックの疾走チューン#7“Linger”では、メタルやグランジをルーツとしたパワフルなドラムが凄まじい推進力を発揮し、あっという間に大気圏外までぶっ飛ばしてくれます。これぞMondazeの醍醐味です。
ヘヴィさは文句なしですが、ダークシューゲイズ目線だと#3“Dusty Eyes”や#5“Driving Out the Weeds”のようなメランコリックな曲がもっと欲しいところですね。引き続き次作に期待したいです。

the deep sleep
the hollow pendulum
the deep sleep
the hollow pendulum
- release date /2024-11-23
- country /Japan
- gerne /alternative-rock, dream-pop, hip-hop, post-hardcore, shoegaze
Concrete TwinやAiZA、MIRAなどで活動していたMichaelによるソロ・プロジェクト、the deep sleepの2ndアルバム。
大久保帯人 『BLEACH』にインスパイアされたタイトルを冠した本作は、シューゲイズ界からゲストミュージシャンを多数フィーチャー。 プログレでいうと、The Alan Parsons ProjectやAyreonみたいな感じですね(伝われ)。
シューゲイズを軸としながら様々なジャンルを横断するバラエティ豊かな作風が魅力ですが、メランコリックな感性が光る曲をいくつかピックアップしてご紹介します。
#3“the heart”:ゴリゴリと刻むギターにMochinaga(Fall of Tears / Neverlust)のハーシュボイスとポエトリーリーディングが交錯する作中屈指のダークなナンバー。envyやKornあたりを好むヘッドバンガーもニッコリなことでしょう(私だ)。
#4“my beautiful boy part 2”:PLASTICZOOMSのベーシストJun Yokoeを迎えたシューゲイズナンバー。東洋風のメロディとサビで炸裂するスクリームが印象的。
#6“love letter”:Suzuka Yoshida (plums / fumi)の切ない歌声と冷気をまとったギターに物寂しい冬の情景を思い浮かべずにはいられない。
#7“a girl and a boy”:ダイヤモンドダストのようにギターが煌めく夢想シューゲイズ。ラストの渦を巻くような美轟音にうっとり。ゲストがきのこ帝国のあーちゃんなのもアツい。
#9“eternal sunshine of the spotless mind”:eureka (ferri-chrome/元For Tracy Hyde)の歌声は可憐なイメージが強いですが、こういうメランコリックな曲にもよくマッチしています。For Tracy Hydeの“Frozen Beach”がお気に入りだった私にとって嬉しいチョイス。
ゲストミュージシャンが生む化学反応が楽しい充実作。次のアルバムも楽しみです。
なお、the deep sleepはライブ活動も行っているのでぜひチェックしてください。私もまだ観たことがないので近いうちに行かねば!
最新情報はthe deep sleepのSNSをチェック

Meaningful Stone
Angel interview
Meaningful Stone
Angel interview
- release date /2024-11-28
- country /South Korea
- gerne /alternative-rock, bossa-nova, dream-pop, grunge, indie-folk, shoegaze
※パラメータはシューゲイズ系のみが対象
韓国のシンガーソングライター김뜻돌 (キム・トゥットゥル)によるプロジェクト、Meaningful Stoneの2ndアルバム。
Korean Music Awards 2021で新人賞を受賞したデビューアルバム『A Call from My Dream』はフォークやボサノヴァを主体とした繊細でドリーミーなサウンドが特徴でしたが、本作ではオルタナティブ・ロックの要素を積極的に取り入れ、#1“Supernova”や#3“Mikael”では本格的なドリームポップやシューゲイズを開拓しています。特に後者は、神聖な光が降り注ぐような美しいサウンドで、MVが公開されると瞬く間に多くのリスナーを魅了しました。
いっぽうダークシューゲイズ好きにオススメなのは#6“I open the window instead of the closed door”。スロウテンポでじっくりとメランコリーを紡いでいくタイプで、おそらくWispの影響もありそうです。また、#7“Red Car”は90sオルタナ/シューゲイズ風と、シューゲイズ系でも楽曲ごとにアレンジを分けている点も好印象。
ちなみにシューゲイズを取り入れた要因の1つとして、サウンドの傾向や天使の姿に扮したMikaelのMVからWispの『Pandora』の影響がありそうとにらみましたが、残念ながら確証となる資料は見つけられませんでした。ぜひメディアの皆様には、インタビューで深堀りしていただきたいところです。
さてそんな中、P-VINEから日本盤CDのリリースが決定しました。この流れで来日も期待したいですね。対バンは天使繋がりでHomecomingsやBlurred City Lightsなんていかがでしょうか?関係者の皆様、ご検討のほどよろしくお願いいたします!

Gleemer
End of the Nail
Gleemer
End of the Nail
- release date /2024-12-06
- country /US
- gerne /alternative-rock, shoegaze, slowcore
コロラド州ラブランドのシューゲイズ・バンドgleemerの6thアルバム。
gleemerは、2011年にCorey Coffman(Gt/Vo)のソロ・プロジェクトとしてスタート。人気作である3rdアルバム『Moving Away』はバンドメンバー4人で制作されましたが、本作はCorey Coffman(Gt/Vo)とCharlie O’Neil(Dr/Ba/Gt)の2名により、ミックス、マスタリングも自身で手掛けたセルフプロデュース作品となっています。
初期からエモやドリームポップ、シューゲイズを融合した作風を開拓してきた彼らですが、持ち味である内省美がさらに深みを増し、ベッドルームポップやスロウコアの領域へと踏み込んでいます。夜の闇へと溶けていくようなサウンドスケープはシューゲイズからは少し離れた印象がありますが、個人的にこの変化は大歓迎です。
イチオシはCoreyもお気に入りという#7“First Dream”。情感豊かでなめらかな歌声とアコースティックギターが醸し出す哀愁が、痛みに蝕まれた心をそっと癒やしてくれます。また、ささくれだったギターをバックにしても繊細さを損なわず立体的に聞かせる音響にCorey Coffmanのエンジニアとしての手腕が光りますね。
孤独な夜のお供にぜひ。

R. Missing
Knife Shook Your Hand
R. Missing
Knife Shook Your Hand
- release date /2024-12-06
- country /US
- gerne /coldwave, darkwave, dream-pop, electro-pop, synthwave
ニューヨークを拠点に活動するダークウェイヴ・デュオR. Missingの1stアルバム。
インディーロック・デュオThe Ropesで活動していたSharon ShyとToppy Frostが、よりエレクトロニックなサウンドを追求し、R. Missingの名義で活動をスタート。2017年の6曲入りデビューEP『Unsummering』の後は、シングルをメインに発表を続け、本作がようやく初のフルアルバムとなります。
ビートは機械仕掛けの時計のように淡々と刻まれ、シンセは信号のように明滅を繰り返し、歌声はビルの狭間を渡る風のように冷ややかに響き渡る……これらが一体となった陰鬱なダンスナンバーが人々の孤独や喪失を見事に描き出しています。ChromaticsやTrevor Somethingを重ねるリスナーも多そうですが、よりシンプルかつミニマルで、感情を排除した冷徹な美学が貫かれている点も魅力です。
小出しにされていたシングルをこうしてまとめて聴くと、良い曲が揃っているなぁと改めて実感。。マーケティング的にはシングル戦略が効果的だとしても、アルバム世代としては時間をかけてじっくり聴きたいんじゃよ。
ちなみにインタビューによると、R. Missingの“R”は「知ることができない」を意味する言葉の略であり、アルファベットの18番目の文字とは何の関係もないとの談ですが、前身バンドのThe Ropeの頭文字を暗示している可能性もありそうです。The RopeもThe Cureのヴァイヴスを持つ良質なドリームポップなので、気になる方はぜひチェックしてください。
The Rope - Bandcamp

past self
Premonitions
past self
Premonitions
- release date /2024-12-13
- country /US
- gerne /darkwave, dream-pop, gothic, indie-pop, newwave, post-punk, shoegaze
k-goth(korean gothic)を掲げるLAのダークウェイヴ/シューゲイズ・バンドの2ndEP。
Sung (Gt/Vo), æther (Syn), Spektor (ba)のトリオ編成で、The Cure、Molchat Doma、Slowdiveに多大な影響を受け、80年代のゴス/ポストパンクをベースにキラキラとしたギターとシンセをまとわせた優美なサウンドが特徴。
さらに前作の1st EPから、韓国生まれのSungによる韓国語の歌詞を取り入れ、通常のゴシック系とは一線を画すオリジナリティを生み出しています。本作も英語の間に顔を出す韓国語の響きがなんとも妖しげで、最恐ホラー産出国らしい闇深さを感じさせます。ダークさは文句なしに過去最高レベル。
しかし4曲のうち1曲はイントロ扱いなので、ボリュームはやや物足りなさを感じました。この勢いでニューアルバムに期待したいですね。
また、白装束をまとい、白塗りメイクの上から赤い帯で目を覆った異質なヴィジュアルも見どころの1つ。ライブ活動も活発なようで、MareuxやTwin Tribes、Drab Majestyといったそうそうたるメンツと対バンしています。いつか日本でライブを拝みたいものですね。