
The KVB
Tremors
The KVB
Tremors
- release date /2024-04-03
- country /UK
- gerne /darkwave, coldwave, gothic, industrial, post-punk, shoegaze, dream-pop
UK発コールドウェイヴ・デュオの8thアルバム。
今作は『ディストピア・ポップ』と称し、よりダークな世界観を追求。ミニマルなビートがもたらす荒涼感に艶のあるボーカルが華を添え、時にロマンティックなギターやシンセがオーロラのようにたなびく……彼らの持ち味である退廃美が全編に渡って発揮されています。
往年の作品に比べるとシューゲイズ度こそ控えめですが、ダークさは指折り。ゴス〜インダストリアル〜ダークウェイヴ大好き人間の皆さんはぜひチェックされたし。Dais Recordsのファンにも超オススメです。
なお「もっとシューゲイズしてなきゃヤダー!」という人は2ndアルバムのImmaterial Visionsをお試しあれ。こちらはシューゲイズ×ダークウェイヴのクロスオーバーの好例として語り継ぐべき名作の1つかと思います。
さてそんなThe KVBですが、再来日にも期待がかかるところ。

2019年の初来日公演はDansa med dig・Luby Sparksというサポートアクトも含め神イベントでしたね。

でもせっかくOnly Now Foreverのリリースツアーなのに推し曲の『Into Life』が聴けなかったのが心残り。どなたかもう一度呼んで頂けませんかぁ~?

Wisp
Pandora
Wisp
Pandora
- release date /2024-04-05
- country /US
- gerne /shoegaze, dream-pop, alternative-rock, grunge
カリフォルニア州サンフランシスコを拠点に活動するアーティストWisp(Natalie R Lu)によるデビューEP。
Wispを瞬く間に有名にしたのは1stシングルのYour Face。当時18歳のNatalie R Luが、grayskiesによって制作されたトラックにAppleのイヤフォンをマイク代わりにして歌を入れ、携帯でミックスしてTikTokへアップロードしたところ大ヒット。Spotifyでリリースされると約1ヶ月で100万再生を達成しました。そして2曲目をリリースする前にBillie EilishやLady Gagaなどを擁するメジャーレーベルInterscope Recordsと契約を結ぶに至ったというから驚きです。2曲目のリリース前は90万だったSpotifyの月間リスナー数は、196万(2024年10月)とさらに膨れ上がり、その人気を不動のものとしています。そんなおとぎ話のようなストーリーも含め、現在のシューゲイズシーンの『顔』といえる存在がWispなのです。
Wispのサウンドの魅力は、淡く儚いボーカルと重厚なギターのハーモニーが織りなす、まるで水中へ沈んでいくようなメランコリックな世界観にあります。Wispが最も敬愛するアーティストはWhirr(InstagramのIDに使用するほどの熱狂的なファン)で、他にCocteau TwinsやDeftonesなどを挙げており、耽美なメロディとヘヴィネスの融合は彼らの影響であることがよく分かります。
ちなみにWispに代表されるヘヴィでメランコリックなシューゲイズは、ニューゲイズ(Nu-Gaze:00年代のシューゲイズ・リバイバル時に生まれた言葉ですが、近年ニューメタル×シューゲイズの文脈に再定義されつつある)と形容され、TikTokを中心に膨大な数のフォロワーを生み出しています。今やTikToKを軽くチェックすればサブスク未登録のダイヤの原石がゴロゴロと見つかるくらいです。様々なレーベルが次世代のスターを探してTikTokに目を光らせているのも納得ですね。
さてWispの経歴はこれくらいにして曲の感想へ移りましょう。オープニングを飾る#1“Pandora”は、Krausのプロデュースによるヘヴィなナンバー。起伏のある展開が生む高揚感がパンドラの箱を開けた時のようなカタルシスを演出します。#2“Your Face”、#3“Enough for you”はWhirrを連想させる陰のあるメロディと沈んでいくようなビートのハーモニーが絶品で、Wispの真骨頂というべき楽曲。一転して#4“Luna”では光が降り注ぐようなドリーミーなサウンドを披露し、作品全体に陰影のコントラストをもたらしています。続く#5“See you soon”は恋愛にフォーカスしたロマンティックな歌詞が印象的。終盤のアップテンポのパートに恋している時の幸福感がよく現れています。最後はノイジーなギターに子守唄のような安からなメロディが溶け込んだ#6“Mimi”で幕を閉じます。
TikTokやSpotifyでのバイラルヒットにより一躍注目を集め、Interscopeに見出された経緯から、産業的に生み出されたスターと揶揄されることもあるようですが、これほど素晴らしい楽曲が揃っていれば、そんな外野の声を黙らせるには充分でしょう。また幼少期にヴァイオリンやクラシックギターを学んだ後にエレキギターとベースを経験しており、現にライブでもギターを弾きながらパフォーマンスしていることから、ミュージシャンとしての才能を持っていることは明らかだと思います。
現在Wispは2023年12月の1stライブを皮切りにして、ライブ活動を熱心に行っており、2024年5月にはPanchikoの北米ツアーのサポートアクトも務めました。カバーアートの天使のようにインターネットの森に潜んでいたWispという個人が、今や大きな翼を羽ばたかせて各地へ熱狂を届けているのだと思うと非常にドラマティックですね。ライブバンドとしてさらなる成長を遂げているであろうWispを1日も早く観てみたいものです。アルバムも制作中とのことで、今後ますます人気が出ることは間違いないでしょう。日本のプロモーターの皆さんは、Wisp来日公演の実現にご尽力くださいますよう何卒よろしくお願い申し上げます。

blood pact
Solace
blood pact
Solace
- release date /2024-04-05
- country /US
- gerne /alternative-metal, alternative-rock, doomgaze, noise-rock, shoegaze
カリフォルニア州ミッションビエホのソロ・シューゲイズ・アーティストblood pactの4thアルバム。
Conk Creetのフロントマンを務めていたBrenton Fergesonが、ヘヴィなシューゲイズを追求するためにバンドを脱退し、Holy Fawnの楽曲名を冠したblood pactとしてソロ活動をスタート。サイケデリックなノイズと甘美なメロディを織り交ぜたヘヴィなサウンドを追求し、これまでにSlide、Scarlet House、WispのドラマーであるJovan Maciasといった気鋭のアーティストとコラボレーションを重ね、注目を集めてきました。
若手の人気バンドVelvetをフィーチャーした本作は、さらにダークでノイジーなサウンドへと進化し、blood pact史上最も刺激的な作品となっています。耳の中でコンクリートミキサーが高速回転しているような轟音をブチ撒けながら、スローテンポでじっくり闇に沈めたり、暴れ馬のごとくエネルギッシュに爆走したり、クリーンボーカルでうっとりさせたと思ったら、凶悪なスクリームを炸裂させたりと、緩急の激しさに脳汁ドバドバ出まくりです。
ダークシューゲイズ好きなら悶絶必至の傑作。Holy Fawnの1stに心を撃ち抜かれた人に特にオススメです。ぜひ限界までボリュームを上げてお召し上がりください。
なお、2025年初頭にリリースされたEPでは、コラボ継続中のWispのJovan Maciasの影響もあってか音楽性に変化の兆しが見られます。今後の展開に注目していきたいですね。

Computer Kill
Computer Kill
Computer Kill
Computer Kill
- release date /2024-04-12
- country /US
- gerne /darkwave, post-punk, dream-pop, shoegaze
USメリーランドのポストパンク/ダークウェイヴ・バンドによるデビューEP。
キラキラしたギターとシンセやロマンティックな歌声はHouse of Harmを彷彿とさせますが、随所に轟音ギターを炸裂させたり、リバーブの海に沈めてみたりと、かなりシューゲイズ度は高め。Male TearsやNuovo Testamentoを連想させるミラーボール輝くゴシック・ディスコナンバー#1“Trouble”、ノイジーな轟音ギターをぶちまけ爆走する#2“Not Nomal”、M83風のシンセワークが光るダンスチューン#3“Haunted”など、バンド名どおりキラーチューンが満載です。
デビュー作でこの完成度とは恐るべし。ゴス、シューゲイズのファンはもちろん、V系が好きな人にもオススメ!ライブも積極的に行っており、2024年4月にはCD GhostのOPも務めたそうです。相性120%の最高の組み合わせじゃん……! 遠くない未来にHANDS AND MOMENTさんが日本に呼んでくれると信じてます。

Modern Failure
Downward Movements
Modern Failure
Downward Movements
- release date /2024-04-19
- country /US
- gerne /shoegaze, alternative-rock, grunge, noise, punk
USワシントン州シアトルより現れた謎のマスクマンによるデビューEP。
サウンドの傾向はTikTok界隈で人気のグランジ〜ニューメタルを経由したヘヴィシューゲイズですが、このアーティストはちょっとひと味違いますぜ。
最大の持ち味はノコギリの如くノイズをぶちまけるギターと獣めいたスクリーム。そこにクリーンボーカルが加わることで生まれる醜美のコントラストにキラリと輝くものを感じました。
その魅力が遺憾なく発揮されているのは#3『Self Help』と#5『Crash and Burn』。激しいノイズとスクリームが鼓膜を激しく苛むも、甘く気怠げなボーカルがその痛みをすっと和らげる。アメとムチの塩梅が絶妙というか、もはやある種のソフトSMですらあります。
音質はかなり荒く、曲ごとの音量も揃ってないわでDIY感は否めませんが、このローファイっぷりが作風に合っていてむしろカッコいいんですわ。今後化けそうな気配がするのでベスト入りとしました。
EP以外のシングル曲も良いのが揃っているので併せてチェックよろです。マスクマン繋がりでDeer Deathとのコラボもあるよ(笑)

Kælan Mikla & Bardi Johannsson
The Phantom Carriage
Kælan Mikla & Bardi Johannsson
The Phantom Carriage
- release date /2024-04-19
- country /Iceland
- gerne /darkwave, gothic, neo-classical, dark-ambient, ethereal-wave, soundtrack
アイスランドのポストパンク/ダークウェイブ・トリオKælan Miklaと同郷のアーティストBardi Johannssonによって、1921年公開のスウェーデンの無声映画"The Phantom Carriage"のために新たに制作されたサウンドトラック。2023年のトランシルバニア国際映画祭で教会にて上映され、両者による生演奏も披露されたそうです。
映画は未視聴ですが、暗く冷たいシンセと神秘的な女性ボーカルが織りなすサウンドは古典ゴシックホラーらしい味わいで非常に好み。
地鳴りのような重いビートと荘厳な女性コーラスの対比が美しい"The Burden of Love and Death"がマイベスト。今は亡きCold Meat Industryを思い出して胸が熱くなります。
4ADのアーティストやネオクラシカル/ダークウェイヴ、インダストリアルゴシックなどがお好きな方はぜひ。日本で上映される日を祈りつつ聴き込みましょう。

BIG|BRAVE
A Chaos Of Flowers
BIG|BRAVE
A Chaos Of Flowers
- release date /2024-04-19
- country /Canada
- gerne /ambient, doomgaze, drone, experimental, folk, noise, post-metal, post-rock, progressive, shoegaze
カナダ・ケベック州モントリオールのエクスペリメンタル・ポストメタル・バンドBIG|BRAVEの7thアルバム。
2012年に Robin Wattie(Gt/Vo)とMathieu Ball(Gt)によって結成。2019年にTasy Hudson(Dr)を迎え、現在はトリオ編成となっています。
破壊的なヘヴィネスを見せつけた前作から、幽玄なフォークミュージックの領域を拡大し、重轟音化したDead Can Danceのような異形のサウンドを展開。
臨場感のある音響で繰り出されるロングトーンのギターと、ハンマーを打ち下ろすような鈍重なリズムはまるで巨大な怪物の足音のようで、ドラクエ5で初めてブオーンに対峙した時の戦慄が蘇ります。また、Robinの歌声は、リサ・ジェラルドの崇高さとビョークのエキセントリックさを合わせ持っており、BIG|BRAVEの個性を物語る重要なピースとなっています。もし古代のシャーマンがエレキギターとアンプを手に入れたらこんな音楽を奏でるのかもしれませんね。
イチオシは#4“canon : in canon”。ネオフォーク×暗黒ドゥームゲイズといった印象で、本作ではだいぶ分かりやすい曲。#3“chanson pour mon ombre”は素人耳では譜面が想像できない即興演奏のようなカオスなナンバー。まるでクリムゾンの『風に語りて』のエクストリーム版ような趣もあり。音符が乱れ飛ぶ中、突如大砲のようなソリッドな轟音が炸裂して思わず息を呑みます。ラストを飾る#8“Mooset”は寂寞としたフォークから徐々に轟音へと変化し、微かな残響とともに幕を閉じます。
聴き終えた後に脳裏に浮かんできたのは、映画『最初にして最後の人類』のあのモニュメントでした。このアルバムは遠い未来の人類が、我々に宇宙の終焉の訪れを知らせる啓示なのかもしれません。
アンビエントやフォーク、ドゥームメタル、ドローン、ノイズ、ポストメタル、ポストロック、シューゲイズなど、様々な要素を繋げた伏魔殿的なサウンドはまさに唯一無二。真の意味でのオルタナティブは、こういう音楽にこそふさわしいと改めて。
なお、シューゲイズ寄りが好みであれば、若干アトモスフェリックな4thアルバム『A Gaze Among Them』がオススメ。どんだけ暗くても構わんッ!という方はフューネラルドゥーム級の暗さの3rdアルバム『Ardor』がうってつけです。我こそはという暗黒音楽愛好家はぜひお試しあれ。
BIG|BRAVEはライブも凄いとの噂なので、いつか生で拝見したいものですね。世界各国の重轟音バンドと親交が深いTokyo Jupiter Recordsさんが招致してくれると期待しています。

EARTHLING
EARTHLING 1st
EARTHLING
EARTHLING 1st
- release date /2024-04-23
- country /Japan
- gerne /post-rock, alternative-rock, shoegaze, post-metal, doom-metal
町田を拠点に活動するポストロック/シューゲイズバンドのデビューEP。V系の血を感じさせるの妖美なボーカルと激しいノイズギターが織りなすサウンドは、甘い芳香を放つ毒の花のよう。ひとたび味わえばしびれるような快感に全身が侵されること必至。耳の限界までボリームを上げて楽しみましょう。
暗い情念を宿した唄が強烈なノイズとともに襲いかかる『ビードロ』、淡く浮遊するメロディとポストメタル級の重いリフの対比が広大なスケール感を演出する『バベル』が双璧。
Plastic Tree、101A、殻などが好きな人はぜひチェックされたし。

Glassing
From the Other Side of the Mirror
Glassing
From the Other Side of the Mirror
- release date /2024-04-26
- country /US
- gerne /post-hardcore, post-metal, doom-metal, blackgaze, shoegaze
USテキサス州オースティンのポストハードコア・バンドの4thアルバム。名門Pelagic Recordsよりリリース。
ポストハードコアの文脈にブラックゲイズ、ドゥームメタルなど様々なヘヴィミュージックを接続。全てをすり潰さんとする激重サウンドに静と動の激しい往来も加わり、うっかりするとズタズタに引き裂かれてしまいそうな緊張感がみなぎっています。
ギターはヘヴィなだけでなくブリザードのような煌めきも感じられ、物憂げなクリーンボーカルが醸し出す寂寞感も手伝って、シューゲイズ耳でも割と美味しくいただけるかと思います。
前作からクリーンボーカルのパートが増えて聴きやすくなっていますので、この機会にぜひお試しあれ。

yuronono
Samsara
yuronono
Samsara
- release date /2024-04-29
- country /US
- gerne /alternative-rock, grunge, post-punk, shoegaze, synthwave
USで活動するアーティスト『yuronono』の2nd EP。TikTokのプロフィールに掲載された「drawing + genre-variety artist」と、カバーアートは本人が描いたという情報以外はほとんど不明ですが、インタビューによると現在は25/7 Recordsと契約を結んでいるようです。
音楽性は、グランジ〜ニューメタルの流れを汲んだいわゆるニューゲイズ系ですが、代表的なアーティストであるWispやNovulentと比べると、よりダークなのが特徴です。ボーカルはウィスパーボイスと湿度の高いアンニュイな低音を使い分けており、妖艶で不吉なムードが随所に漂います。サンスクリット語で「輪廻」を意味する『Samsara』というタイトルや、生気のない虚ろな表情を描いたカバーアートから、本作は「終わりなき絶望のサイクル」を表現しているのかもしれません。
イチオシはメタルコア/オルタナティブロック系のシンガーRevengeinKyotoをゲストに迎えた#4“no surprises”。ヘヴィなギターをバックにスクリームとクリーンボーカルが交錯して生まれる醜美のコントラストがお見事。
#5“villainess”では、一転して軽快なビートのポストパンク/ダークウェイヴ風の楽曲を披露。低音ボイスがハマっていて超クール。ラストの#6“remnant”は、悪夢に囚われたChvrchesのようなダークなシンセウェイヴ。ヘヴィなだけでなく、ゴスの要素を取り入れている点は、ShedfromthebodyやGraywaveを彷彿とさせますね。
なお、yurononoは本作の後も継続してシングルをリリースしているので、気に入った方はぜひチェックしてみてください。弊サイトでレビューしたgreediやdeer deathとのコラボ曲もありますよ!