ダークシューゲイズ・ドリームポップのベストアルバム(2024年版)ダークシューゲイズ・ドリームポップのベストアルバム(2024年版)

BEST OF
DARK
SHOEGAZE & DREAMPOP
2024

A Swarm of the Sun

An Empire

A Swarm of the Sun

An Empire

  • release date /
    2024-09-06
  • country /
    Sweden
  • gerne /
    ambient, doomgaze, post-classical, post-metal, post-rock, shoegaze
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スウェーデンのポストメタル・デュオA Swarm of the Sunの4thアルバム。

スウェーデン・ストックホルム出身のJakob Berglund(Vo)とErik Nilsson(Gt/Pf)によって結成。Jakobは幼少期、プログレを好む父親がよく聴いていたPink Floydから音楽嗜好の基礎を形成。10代半ばではNine Inch Nailsの"The Downward Spiral"とSwansの"Soundtracks for the Blind"に心酔していたそうです。現在ではテクスチャーが重厚でダークかつドローンなプログレッシブ/ポストロックを好み、This Will Destroy You、Jakob、Fourteen Nights at Seaをお気に入りとしながらも、Godspeed You! Black EmperorとMogwaiが最高峰だと評しています。

こうした多様な影響を土台に本作『An Empire』では、前作『The Woods』の物語性を継承しつつ、6曲71分という彼ら史上最も壮大なアルバムを生み出しました。

アンビエント〜ポストクラシカルを軸にしたミニマルな展開に、シューゲイズ風の繊細なクリーンボーカルが漂い、徐々にボルテージを上げて轟音へと昇華させる。静と動が織りなすドラマティックなサウンドは、まるで宇宙のように広大無辺。茫漠とした暗黒空間からアステロイド帯、そして超新星爆発まで想起させるスペクタクルな体験をもたらします。

シンセ、ヴィブラフォン、ハーモニウム、ミュージカルソー、トロンボーン、パイプオルガンなどによる重層的なテクスチャーも魅力的。轟音の中にエレガントさが共存し、一般的なポストメタルとは一線を画す複雑な味わいを生み出しています。

#3"The Pyre"は18分の長尺でその魅力を余すところなく味わえる名曲。開幕から緊迫感のある展開で魅せる#5"The Burning Wall"を配置し、アルバムの流れにメリハリを生む手腕もお見事。プログレやポストロックだけでなく、アンビエント、ポストクラシカル、ドローン、シューゲイズといった要素を取り入れさらなる深化を遂げた荘厳なるレクイエムをご堪能あれ。

soto wa ame

soto wa ame

  • release date /
    2024-09-07
  • country /
    Japan
  • gerne /
    shoegaze, dream-pop, alternative-rock, grunge, nu-metal, newwave
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東京のエモゲイズ・バンドForbearのギターボーカルYuki Yoshida氏によるソロプロジェクト。AppleMusicのオススメに現れたので何気なく聴いてみたところ、USシューゲイズ風のヘヴィなサウンドに清涼感のある声質の女性ボーカルという組み合わせが新鮮で即座に気に入ってしまいました。さっそくこの魅力的な歌声の持ち主は何者なんだろうと調べてみたら、セルフライナーノーツでボーカロイドの音楽的同位体 裏命(RIME)だと判明。きっと調声の賜物でもあるだろうけど、ボーカロイドがここまで進化しているとは驚きでした。

イチオシは重厚でグルーヴィなリフとアトモスフェリックなパートの対比で魅せる#4“トロイメライ”。Narrow HeadやTeenage Wristなどを愛聴している人にぶっ刺さること間違いなし。いっぽう#5“遠泳”はヘヴィさを抑え、アンニュイな歌声とメランコリックなメロディのマッチングにより夜の街を彷徨っているような新たな一面を見せてくれます。しかしこのクオリティでSpotifyの月間リスナー数が一桁だなんてちょっと信じがたいですね……。「日本はヘヴィシューゲイズが少ないなぁ」とお嘆きの方はぜひsoto wa ameを聴きましょう!

ちなみに制作者のYuki Yoshida氏はかなりのシューゲイズオタクのようで2020年代のアメリカン・シューゲイザー新世代と国内シーンの諸相という記事を書かれています。昨今のシューゲイズ事情をサクッと俯瞰したい方はご一読をオススメします。

Trentemøller

Dreamweaver

Trentemøller

Dreamweaver

  • release date /
    2024-09-13
  • country /
    Denmark
  • gerne /
    electronic, darkwave, dream-pop, post-punk, post-rock, shoegaze
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デンマーク・コペンハーゲンのアーティストAnders Trentemøllerの6thアルバム。

Trentemøllerは、2006年のデビューアルバム『The Last Resort』でミニマルでダークなエレクトロサウンドでキャリアをスタートし、徐々に音楽性を変化させ、前作『Memoria』でドリームポップ〜シューゲイズに完全覚醒。『Dreamweaver』(夢を紡ぐ者)と題した本作でもその流れを継承しつつ、全編にアイスランドのシンガーDisa Jakobsをフィーチャーし、シューゲイズとダークウェイヴの融合という新境地を開拓しています。

神秘的なシンセとリバーブギターが溶け合う中、Disaの歌声が北欧の冷涼な空気を解き放つと、夜空に浮かぶオーロラのような幻想的なサウンドスケープが広がり、心地よいメランコリーへと誘ってくれます。さらにボーカル曲がメインとなったため、親しみやすくなっている点も魅力の1つです。

闇の中を彷徨うような#2“Nightfall”から#3“Dreamweavers”でポストロック風にボルテージを上げてダンスチューンへシフトする流れが痛快。#4“I Give My Tears”では吹雪のような荒涼としたノイズを取り入れ、新たな一面を見せてくれます。

続く#5“Behind My Eyes”が個人的ハイライト。ゴス/ダークウェイヴ色を強く打ち出した躍動感のあるナンバーで、The KVBやSeasuferのファンなら悶絶必至です。

最後にピアノをフィーチャーした安らかなインスト#10“Closure”を配置し、夜明けの訪れを感じさせる演出もお見事。闇と光、物語性とポップ性のバランスが秀逸な傑作です。

さて、そんなTrentemøller ですが、初来日となる東京公演が2025年4月16日に予定されていましたが、アーティスト都合によりキャンセルとなってしまいました。 ゴシック系シューゲイズの来日は極めて貴重なだけにとても残念です。しかし同志諸君よ、これに懲りるなかれ!次の機会を紡ぐべく、Trentemøller の素晴らしさをどしどし日本中に広めていきましょう!

Zetra

Zetra

Zetra

Zetra

  • release date /
    2024-09-13
  • country /
    UK
  • gerne /
    darkwave, doom-metal, gothic-metal, grunge, post-punk, shoegaze, synthwave
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UKのシューゲイズ/ゴシックメタルデュオZetraの1stアルバム。

ZetraはAdam Saunderson(Gt/Vo)とJordan Page(Syn/Vo)によって2018年に誕生。当初はシンセポップやニューウェイヴの方向性を模索していましたが、自然とヘヴィかつ幻想的なサウンドへ変化していき、「ゴシックヘヴィメタルシューゲイズ」と称する独自の音楽性を確立しました。

キーボードが生み出す美しいテクスチャーはDrab Majestyに通じるものがありますが、ギターはメタル由来のヘヴィなリフが主体で、ボーカルはより繊細かつ優美である点が最大の特徴です。Black Sabbathのヘヴィネス、Type O Negativeの妖艶さ、Cocteau Twinsの耽美性がバランスよく配合されており、「ゴシックヘヴィメタルシューゲイズ」という表現は実に的確だと思います。ゲストミュージシャンがSerena Cherry(Svalbard)、Sólveig Matthildur Kristjánsdóttir(Kælan Mikla)、Gabriel Franco(Unto Others)と、ゴシック/メタル界からの人選なのも納得です。

「ゴシックヘヴィメタルシューゲイズ」の真価は#1“Suffer Eternally”で最大限に発揮されます。バッキングはヘヴィでメタルそのものなのに、オーロラのようなキーボードと天使のごとき美しい歌声が一体となるとあら不思議、しっかりシューゲイズらしく聴こえるではないですか。メタルとシューゲイズのクロスオーバーは、どちらかの要素が薄くなりがちですが、この手があったかと唸らされました。また、ゴシックメタルからシューゲイズへの転身はいくつか例があるものの、ゴシックメタルとシューゲイズを明確に融合させる試みはほとんど前例がなく、その点でも革新的といえるでしょう。

美しいサウンドとは裏腹な悪魔めいたルックスも魅力の1つ。YouTubeのコメント欄でも「KISSやブラックメタルを想像して聴いてみたらギャップに驚いた」というコメントがチラホラ。SvalbardのボーカリストSerena Cherryをフィーチャーした#3“Starfall”は、Adamの美しいクリーンボーカルとSerenaの凶悪なスクリームが天使と悪魔の戦いさながらに激しく交錯しますが、悪魔にしか見えない方が天使側というのがまた面白い(笑) 

アルバム前半にMV曲が固まっていますが、後半に入ってもクオリティは衰えることなく、揺らめくピアノでメランコリックに浸らせる#7“Inseparable”、シンセウェイヴ風にノリノリにドライブするロックナンバー#8“Gaia”、Unto OthersのボーカリストGabriel Francoのポエトリーリーディングをフィーチャーした黙示録ソング#9“Moonfall”など、名曲が目白押しです。

なお、Zetraはデビューアルバムの発売前にフィンランドの人気バンドVV(ヴィレ・ヴァロ)のサポートを務めたことでゴシック好きの間で熱い注目を集めているようです。追加アクトにアイスランドのEivørを迎えた千秋楽のロンドン公演はさぞ盛り上がったことでしょう。このメンツであれば、チケ代が10万でも余裕で払います!

今のところツアー先はヨーロッパと北米だけですが、1日も早い来日を願わずにはいられません。白塗り繋がりでDrab Majestyと来日してくれたらまさに狂喜乱舞ものですね。どうかこの想い、HANDS AND MOMENTさんへ届けッ!

TORIENA

圏外

TORIENA

圏外

  • release date /
    2024-09-25
  • country /
    Japan
  • gerne /
    shoegaze, chiptune, hardcore-techno, gabber, breakcore
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日本の音楽プロデューサーTORIENAの10thアルバム。チップチューンからハードコアテクノを渡り歩き、ゲームへの楽曲提供や海外公演もこなすTORIENAが、本作でシューゲイズ・サウンドを開拓!

特に#11“エミリー”は、極彩色の霧のようなサイケデリックなギターがMy Bloody Valentineを彷彿とさせる本格派。何も知らずたまたまMVを視聴したのもあって凄まじい衝撃でした。全編8mmフィルムで撮影された映像もシューゲイズらしい陶酔的な世界観を見事に表現しています。また#3“アンコンシャスバイアス”は鋭角なビートとメランコリックなメロディが絶妙に絡み合う中毒性の高いナンバー。#4“Dominant”はアンニュイなささやきをのせて疾駆する4つ打ちダンスチューンで、前2つに比べるとシューゲイズ度は控えめですが、ディレイをきかせたギターにシューゲイズ〜ドリームポップの血を感じる人も多いでしょう。

これらのシューゲイズ系の楽曲は、従来のダークでアグレッシブなレイブサウンドともうまく調和しており、ジャンルの垣根を超えて独自の世界観を構築している点も強みですね。

さてここからはTORIENAがどういう経緯でシューゲイズに目覚めたのかについて語っていきます。そのきっかけを探るべく過去のアルバムを遡ると、ダークなサウンドへシフトした6thアルバム“PURE FIRE”あたりからギターを導入した曲がみられますが、シューゲイズへの明確な兆候は掴めませんでした。

ところがこのインタビューで衝撃の事実が判明。2024年2月頃にギターがやりたくなってジャズマスとエフェクターを一式揃え、わずか1週間でシューゲイズを作曲したのだそうです。しかも2〜3週間後の秋葉原MOGRAのライブで早速披露したのだとか……それまではアコギとエレキベースを少し経験したくらいだというから、とんでもない才能ですね。

とはいえ、シューゲイズ特有のフィードバックノイズを伴う轟音ギターとハードコアテクノのハーシュノイズはかなり親和性が高いため、シューゲイズへの目覚めは突然変異ではなく、TORIENAにとってはごく自然な流れだったのかもしれません。

今後TORIENAがどういったメタモルフォーゼを遂げていくのか非常に楽しみです。さらにシューゲイズへ傾倒するのか、あるいは得意分野のレイブミュージックとの融合にチャレンジしていく可能性もありそうです。個人的にはCURVE風のインダストリアル・シューゲイズやドラムン~ブレイクゲイズ、はたまたガバ~スピードコア風の世界最高速シューゲイズにもチャレンジしてくれたらイイナ~!(言うだけならタダ)

※グラフの数値は“アンコンシャスバイアス”と“エミリー”を対象としています

路傍の石

Pater Noster

路傍の石

Pater Noster

  • release date /
    2024-09-28
  • country /
    Japan
  • gerne /
    blackgaze, post-blackmetal, shoegaze, vocaloid
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ボカロPとバンドの2つの顔を持つ東京発のアーティスト『路傍の石』による6thアルバム。

本作は、ブラックゲイズ/ポストブラックメタルに初音ミクをフィーチャーした意欲作。ブラックメタル由来のノイジーなギターが砂嵐のごとく激しく吹き荒れる中、ミクさんの神秘的な歌声と凶悪なスクリームが交錯し、黙示録的な世界観を描き出しています。ブラックゲイズは「美と暴力」「光と闇」のコントラストが最大の魅力だと思っているのでこの作風は大歓迎。すっかり闇が薄れてしまった某サッドネスや某デフヘヴンにも見習って頂きたいものです。

イチオシは#5“荒野にて”。陰鬱なムードのミドルテンポで始まり、一気に爆走パートへスイッチする流れが鮮烈。続く#6“Violet”でクラブミュージック風のシンセが飛び出すものの、本編はあくまで美メロブラックゲイズというギャップが楽しい。きっとViolet Coldが好きな人ならニヤリとすること請け合いです。

ラストを飾るのは神々しい光が満ちた爆走チューン#7“Messia”。ミクさんが長い巡礼の旅を終え、荒廃した世界に希望の光が蘇っていくかのようなドラマティックな情景が浮かんできます。

ちなみに路傍の石はバンド形態でライブ活動も行っていますので、東京近郊のファンはぜひ足を運んでみて下さい。かくいう私もまだ観たことがないので近い内に行かねば!

最新情報は路傍の石の各種SNSをチェック:X(旧Twitter)Instagram

101A

killing dress

101A

killing dress

  • release date /
    2024-10-01
  • country /
    Japan
  • gerne /
    alternative-rock, shoegaze, post-rock, dream-pop, industrial, grunge, gothic, darkwave, post-punk, ethereal-folk
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101Aは、noah(Vo/Gt), the k(Ba), Sally(Dr)からなる東京を中心に活動するロックバンド。結成20年以上のキャリアを持ち、海外ツアーやFUJI ROCK FESTIVAL '06出演の経験を持つ実力派です。最新作『killing dress』は、アルバムでもEPでもない独特のフォーマット“Not Album”としてリリースされました。

101Aの最大の魅力は、ゴシック、インダストリアル、メタル、グランジ、シューゲイズ、ポストロック、プログレ、フォークといった多彩な音楽性を融合させながら、徹底的に暗黒耽美な世界観を構築している点にあります。宝石のような煌めきや神秘的な歌声はCocteau Twins、古代の儀式めいた暗黒歌曲はDead Can Dance、毒気たっぷりのロックチューンはBauhausといったように4ADのレジェンドたちの影響を感じさせつつも、オマージュにとどまらない独自の美学を貫き、オリジナリティ溢れる作品を創造しています。

本作の開幕を飾る#1“樹海”は、切れ味鋭いリズムと幽玄な歌声が交錯するドラマティックなナンバー。続く#2“bark”では、脈動するベースラインと激情的な歌唱が毒々しくも美しい世界を描き出す。#3“Laura”は、初期Love Spirals Downwardsを連想させる神秘的なドリームポップで、noah氏の儚げな歌声は思わず涙が零れてしまうほど美しい。#4“midnight lunch”では、不穏なメロディとSally氏の技巧的なドラミングが絶妙な調和を生み出し、#5“killing dress”で一気に轟音ギターを爆発させ、そして鎮魂歌のように安らかなメロディの#6“field”が旅路を締めくくる。

101Aの集大成であると同時にさらなる深化を感じさせる傑作。暗く美しい音楽を愛する全てのリスナーにオススメしたい逸品です。

Occults

Rituals

Occults

Rituals

  • release date /
    2024-10-05
  • country /
    US
  • gerne /
    darkwave, gothic-rock, newwave, post-punk, shoegaze
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Pop
Extreme

LAのポストパンク/シューゲイズ・デュオのデビューアルバム。

ダンスポップ・バンドNothing Stillで20年ほど共同制作をしてきたEmilio Hernandez(Gt/Vo/Syn)とPatrick Lawrence(Dr)により結成。彼らが10代の頃に影響を受けたDepeche Mode, The Smiths, Joy Division, The Cure, Sister of Mercyといった80’sゴス/ポストパンクやニューウェイヴをベースに90’sシューゲイズのメランコリックなムードを融合させたサウンドが特徴です。

イチオシは映画Blood Relativesに使用された#8“Crystal Coffins”。The Cureや初期DIIVのようなキラキラとしたギターとシンセが絡み合うアップテンポなナンバーで、退廃的でありながらシンセウェイヴ好きにも響きそうなキャッチーさがあります。深い哀愁を醸し出すマイルドなボーカルも相性抜群。

また、グルーヴィでダークなダンスチューン#9“Depeche Mode”もお気に入り。曲名から分かるように彼らはDepeche Modeの大ファンで、デビュー初期にはBlack Celebrationのクールなカバーを披露しています。ファンはぜひチェックしてください。

Occultsは2024年11月20日にACTORSのOAとして初ライブを行い、さらに2025年にはニュージャージー州パーシッパニーで開催されるゴス/インダストリアル系の大型フェスDark Force Festへの参加が決定しています。今後ますます注目を浴びることは間違いないでしょう。HANDS AND MOMENTさんが目をつけていると期待して来日を待ちましょう!

trauma ray

Chameleon

trauma ray

Chameleon

  • release date /
    2024-10-25
  • country /
    US
  • gerne /
    alternative-rock, doom-metal, emo, grunge, post-rock, shoegaze
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テキサス州フォートワースのシューゲイズ・バンドによる1stアルバム。レーベルは名門Dais Records。

trauma rayの現在のラインナップは、Uriel Avila(Gt/Vo)、Jonathan Perez(Gt)、Darren Baun(Ba)、Coleman Pruitt(Gt)、Nick Bobotas(Dr)の5人編成となっています。結成の経緯については、Audiotreeのライブインタビューで次のように語られています。

Urielがカラオケバーを運営していた時にDarrenと出会い、一緒にブリトニー・スピアーズを演奏して遊ぶようになったのがすべての始まりでした。その後、シューゲイズを演奏するメンバーを探していたJonathanがフォートワースのバーを訪れた際、UrielがSlowdiveやCocteau Twinsをプレイしていたのを聴いて意気投合し、ジャムセッションをするようになり、Facebookを通じてNickが合流したのだそうです。カラオケが発端とは奇妙なめぐり合わせですね。

テーマとなる『死』が「形を変え、どこにでも現れるもの」であることから『Chameleon』と題した本作は、My Bloody ValentineやDuster、Hum、Slowdiveなどを影響源に挙げ、甘美なクリーンボーカルと、茨の棘のようなノイジーなギターを融合したサウンドを展開しています。

開幕の#1“Ember”でさっそく彼らの持ち味である力強くうねるヘヴィなリフが炸裂。続く#2“Torn”は爽快な疾走感チューンで始まり、ヘドバン必至のヘヴィなパートへとなだれ込む展開が圧巻。#6“Elegy”はドゥーミーなリフの波状攻撃の合間にオーロラのような神々しい光が差し込む明暗のコントラストが光る。#7“Drift”は一転してアンビエントなブレイクビーツ風のナンバーで、酷使した鼓膜をリフレッシュさせるも、続く#8“Breath”でノイズ責めを再開。巧みな緩急の演出に、轟音フェチは悶絶必至でしょう。

後半のハイライトは#9“Spectre”。重厚なギターをバックに神々しいボーカルが浮遊する様は、まるでヘヴィシューゲイズで奏でられた鎮魂歌。ラストは子守唄のような安らかなナンバーで締めくくられ、旅の終わりにふさわしい深い余韻をもたらします。

ニューゲイズ系は良くも悪くも曲調が似通いがちですが、彼らは幅広いアレンジセンスで独自のカラーを打ち出しているのが強みですね。飽和気味なシーンの中で、カンフル剤として大いに暴れ回ってほしいものです。Deafheavenとのツアーも発表されており、今後ますます注目を浴びそうです。ぜひそのまま来日しろください!笑

ちなみに、彼らの甘美かつ退廃的な作風や、グリーンを基調としたイメージカラーから、Type O Negativeの影響を探ってみましたが、確たる証拠は見つかりませんでした。ただ、ギターボーカルのUrielが2024年のお気に入りアルバムにBlood Rave『Determinate Bias』を挙げていたため、ゴス嗜好がある可能性は高そうです。もし来日が実現したら、ぜひ本人に尋ねてみたいですね。

Ural Mountains

Dead Oceans

Ural Mountains

Dead Oceans

  • release date /
    2024-10-25
  • country /
    Argentina
  • gerne /
    dream-pop, indie-rock, shoegaze
Light
Dark
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Pop
Extreme
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Dark
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Fast
Pop
Extreme

アルゼンチン在住のアーティストによるソロプロジェクトUral Mountainsの4thアルバム。

Ural Mountainsは、アルゼンチン・ブエノスアイレスを拠点とするフランス人ミュージシャン、Cyril Degillesが2013年に始めたプロジェクトで、ドリームポップとポストパンクを融合させたサウンドを追求しています。

全編に渡って繰り出されるキラキラとしたギターはまさにDIIVの系譜。さらに本作は、本家よりもボーカルは物憂げかつ甘美で、メロディは痛々しいまでの冷気を帯びており、これまでで最もダークな仕上がりとなっています。また#2“Gust”や#7“Softly As It Comes”といった轟音系シューゲイズが増えている点も見逃せません。

ハイライトは、Death of Heatherが参加した#4“Harbour”。Whirr級の冷気が漂う中、儚く美しい歌声を披露しています。タイとアルゼンチンという離れた土地で活動する両者が、どのような経緯でコラボするに至ったのか気になるところですね。