ダークシューゲイズ・ドリームポップのベストアルバム(2024年版)ダークシューゲイズ・ドリームポップのベストアルバム(2024年版)

BEST OF
DARK
SHOEGAZE & DREAMPOP
2024

deer death

Fractured

deer death

Fractured

  • release date /
    2024-08-09
  • country /
    US
  • gerne /
    shoegaze, alternative-rock, grunge, dream-pop
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シカの快進撃は止まらない!謎の覆面シューゲイズ・アーティストdeer deathが今年3作目となるアルバムをリリース。デモ集や編集盤を含めるとなんと5作目となります。あのNovulentすら凌ぐレベルの多作っぷりでファンとしては嬉しい悲鳴。

あらためてdeer deathの魅力を挙げますと、非常にノイジーでありながら随所にエーテル的な美しさが漏れ出しているギターは外せません。前作Burden(Nextimeとのコラボ作)と比べると違いがより実感できると思います。またシューゲイズ系では珍しい武骨な歌声もウィスパーボイスでは得られない深い哀愁を醸し出していてdeer deathならではの強烈な武器となっています。

木漏れ日のような淡いアルペジオと哀愁たっぷりのメロディの対比で魅せる#1"Nothing By Myself"、苦悶に満ちたスクリームがアクセントを添える#2"A Letter"、胸をかきむしりたくなるほどの慟哭が襲う#3"Kill the Love"など名曲のオンパレード。TikTok発のシューゲイズアーティストの中でも今やNovulentやWispに負けないくらい気に入っています。

本作の後にもシングルを1曲公開しており、またしても今年中にアルバムがリリースされる可能性もありそうです。deer deathからますます目が離せませんね!

Nebula Orionis

The Long Path to Nowhere

Nebula Orionis

The Long Path to Nowhere

  • release date /
    2024-08-10
  • country /
    Russia
  • gerne /
    blackgaze, postmetal, post-rock, shoegaze
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ロシアのコズミック・ポストブラックメタルの11thアルバム。

Nebula Orionisは、オーケストラのパーカッショニストが本職のAlexander氏によるソロ・プロジェクトで、2013年にスタートし、10年以上活動を続けるベテランです。ショスタコーヴィチやラフマニノフなどの20世紀の作曲家の他にアトモスフェリック・ブラックメタルをインスピレーション源として、ブラックメタルをベースにシンセやピアノを散りばめた美しいサウンドを作り上げています。

前作『Sorrow』はブラストビートを伴ったポストブラックメタル色の強い作品でしたが、本作はミドルテンポ主体でシンセを前面に出したメロディアスな仕上がりとなっています。ヘヴィなギターをバックにシンセやピアノが星々のようにキラキラと漂う様は、まるで宇宙船から望む広大な銀河さながら。宇宙の神秘を体感するのにもってこいのアルバムです。

前作でも登場したブラックメタル由来のスクリームは今作でも健在で、神秘的なサウンドにアクセントを添えています。前作のレビューでも触れましたが、10mくらい先から聞こえてくるような独特の響きが黎明期のブラックメタルみたいで気に入っています。EnshineやUnreqvitedといったSF風味のポストメタル/ブラックゲイズがお好きな方に特にオススメ。

作品が多すぎてどのアルバムから聴けばいいのかお悩みの方へアドバイス。音楽性は一貫しているためどれから手をつけても問題はありませんが、冷たく哀しいサウンドならWinter Hymns(2015)、激しいものが好みならSorrow(2023)をおすすめします。

それでは、オリオン星雲を巡る壮大な旅路をお楽しみくださいませ──

WaB.

There's no one here

WaB.

There's no one here

  • release date /
    2024-08-17
  • country /
    Japan
  • gerne /
    alternative-rock, drum&bass, electronica, noise, shoegaze, slowcore
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東京のソロアーティストWatanabe氏によるデビューアルバム。

再生と同時に、細かく砕いたガラスを耳に流し込まれるような凄まじいノイズが襲来。鼓膜を破らんばかりの轟音に終始圧倒されますが、耳休めにアンビエントなドラムンベースや素朴なアコースティック曲を挟むなど、ワンパターンにならない工夫も光っています。

ボーカルはクリーンとスクリームを使い分けるスタイルで、とりわけ#7“ether”でのスクリームは、GrisのIcareやかつてのAlcestのNeigeといった絶叫自慢に肉薄するほど切れ味が良く、古参のブラックメタル好きもニッコリなことでしょう(私だ)。

このWaB.やKuragariのように極限まで歪ませたノイジーなシューゲイズを私は『聴覚破壊系』と呼んでいるのですが、近年じわじわと盛り上がりつつあるような気がします。ニューゲイズの次なるムーブメントとしてフォローしておくが吉です。

ちなみにWaB.はライブ活動も行っており、2025年1月23日㈭に開催される調布Crossのイベントでは、WarB名義でバンドセットでの出演が決まっています。気になる方はWaB.のX(旧Twitter)をぜひチェックしてください。

Sadness

your perfect hands and my repeated words

Sadness

your perfect hands and my repeated words

  • release date /
    2024-08-23
  • country /
    US
  • gerne /
    blackgaze, emo, post-black-metal, post-rock, shoegaze
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アメリカを拠点に活動するDamian Anton Ojedaによるデプレッシブブラック/ブラックゲイズ・プロジェクトの2024年作。最近の傾向から予想してはいましたが、いよいよ本格的に光属性へと変貌を遂げました。悲痛なスクリー厶を封印し、愛と希望に満ちた美しいサウンドスケープを徹底的に描いています。そこにはかつてあった深い哀しみは見当たりません。

思わず「節子!それSadnessやない!Happinessや!」とツッコミたくなるけれど、何がともあれ幸せならOKです! 絶望を乗り越えた先に訪れるハッピーエンドほど尊いものはありませんしね。ただし、だいぶ光寄りになったとはいえ、鼓膜を破壊せんばかりの激しいギターノイズと神々しい美メロのハーモニーが生むカタルシスは健在なのでご安心ください。

近年のパンデミックや戦争がもたらした暗いムードを払拭するかのようにAlcestやParannoul、MONOといったアーティストがこぞって希望に満ちた作品をリリースしましたが、その中でもSadnessは元がダークなのもあって、ひと際まばゆく輝いていたと思います。長いトンネルを抜けた先で、光がいつもより眩しく感じるように、闇と光は表裏一体なのです。

そんなSadnessですが、突如Patreonで引退宣言(現在は削除済み)をしてファンを驚かせたものの、現在も活動を継続しており、10月にはライブも行ったようです。いつか彼が日本へ来てくれるその日まで、私はこの幸せを耐え抜いてみせる──(きづきあきら『メイド諸君!』から引用)

なお2024年にリリースされた3作の所感ですが、それぞれわずかに特色が異なる印象を持ちました。

  • 『your perfect hands and my repeated words』:ドリームポップ〜シューゲイズ〜ポストロックのバランス系
  • 『i want to make something as beautiful as you』:ポストロック寄り
  • 『i love you』:シューゲイズ寄り

当サイトは最もキャッチーな本作をピックアップしていますが、いずれも劣らぬ名作なので、ぜひまとめてチェックしてください。

Novulent

Vol. 2

Novulent

Vol. 2

  • release date /
    2024-08-24
  • country /
    US
  • gerne /
    shoegaze, slowcore, grunge, nu-metal, emorap
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前作Secret Lettersから約5ヶ月にして早くもNovulentのニューアルバムが到着!

再生してびっくり、音がめちゃくちゃ良くなってるじゃんよ……!ローファイなサウンドだったVol. 1から1年と経っていないのにこの進化は何事でしょう。特にギターの厚みが格段にアップしており、これまでで最もヘヴィな仕上がりになっています。#4"Closure"の凍てつくようなメロディと嵐の如き轟音が生み出すカタルシスは彼が敬愛するWhirrに匹敵するレベルといっても過言じゃないでしょう。加えて曲の構成が以前よりしっかり練られていて、Vol. 1の頃に感じた物足りなさがだいぶ解消されています。文句なしにNovulentの最高傑作です。

月間リスナー数も2024年8月時点で2,93Mとさらに増加し、とうとうSlowdive(2,66M)を超え、Cocteau Twins(3,05M)をも上回りそうな勢いです。これまではTikTokのアルゴリズムが生み出したスターといった捉え方をされる向きも少なからずあったでしょうが、サウンドプロダクションが大幅に強化されたことで、名実ともに現在のシューゲイズ界を代表する存在になったことは間違いありません。バンド編成でVol. 2のライブツアーを行うようなので、来日にも期待したいところですね。NewDadがあっさり完売したのを受けて、虎視眈々と狙っている日本のプロモーターもきっといるんじゃないでしょうか。その筋の方、来年あたりいかがですか?

余談ですが、#3"Skin To Skin"のイントロで「end here…」という音声が入るのですが、同じものがDeadlyswcctの"perpetual senescence"にも使われていて、気になって夜も寝られません。もし元ネタをご存知の方がいらっしゃいましたら、フッターのXかInstagramからお気軽にご連絡くださいませ。

Cold Gawd

I'll Drown On This Earth

Cold Gawd

I'll Drown On This Earth

  • release date /
    2024-08-30
  • country /
    US
  • gerne /
    shoegaze, post-hardcore, post-rock, slowcore, alternative-rock
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USカリフォルニアのシューゲイズ・バンドの3rdアルバム。名門Dais Recordsの所属となってから2作目となります。

Cold Gawdは、2020年にMatt Wainwrightのソロプロジェクトとしてスタート。これまでは彼が全てのパートを自ら演奏していましたが、本作からバンド・メンバーが制作に加わったことでサウンドに肉体的な質感やダイナミズムが生まれ、一段とクオリティがアップしています。

Matt Wainwrightの咆哮で幕を開ける#1"Gorgeous"で新生Cold Gawdの世界に一気に引き込まれる。続く#2"Portland"〜#5"Malibu Beach House"のブルドーザーのごときヘヴィなギターと情感豊かな歌声の対比が生む美しさはCold Gawdの真骨頂。特にリードギターとボーカルのハーモニーが醸し出すメランコリックな味わいは絶品で、最も影響を受けた作品にWhirrの"Feels Like You"を挙げているのも納得です。目を閉じて聴くと、葬送曲が流れる中で墓穴の底に横たわり、生きながらに埋葬されるような心地すらします。後半に夢見心地な曲を配置して天国へ導く流れもお見事。

本年度のメランコリック・シューゲイズを代表する傑作の1つ。WhirrやLife on Venus、Newmoonなどがお好きな方はぜひ。

Mint Field

Aprender A Ser: Extended

Mint Field

Aprender A Ser: Extended

  • release date /
    2024-08-30
  • country /
    Mexico
  • gerne /
    dream-pop, shoegaze, psychedelic-rock, trip-hop
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メキシコのドリームポップ/シューゲイズ・バンドの3rdアルバム“Aprender A Ser”の第2部にあたる作品。

耽美なドリームポップと仄暗いトリップホップが融合した内省的な世界観を継承しつつ、#5“Una flor sin interior”や#6“Ve hacia la ventana”では1stアルバムを彷彿とさせるサイケデリックな轟音が顔を出し、作品全体にアクセントを与えています。

スペイン語のエキゾチックな歌唱も健在で、上質なお酒のような酩酊感をもたらしてくれます。気軽に異世界へトリップしたいときにはうってつけの逸品。SlowdiveやPortishead、dearyなどがお好きな方はぜひ。

nannou

scab

nannou

scab

  • release date /
    2024-09-01
  • country /
    Japan
  • gerne /
    alternative-rock, dream-pop, gothic, progressive, shoegaze
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Extreme

東京発オルタナティヴ・ロック・バンドnannouの1st EP。

2010年頃に結成され、2015年に1stアルバム『suicide underground』をリリース。その後メンバーチェンジを経て、本作はseheru(Vo/Key)、yuユ(Gt)、たこすけ(Ba/Cho)、tayu(Dr)の4人で制作されました。※たこすけ氏はリリース後に脱退

ノイジーなギターを主体に繊細なアルペジオとキーボードを散りばめ、深い哀愁を宿したボーカルが妖しく舞い踊る。かつての4ADのような耽美性を軸にゴシック、オルタナ、シューゲイズ、プログレといった様々な要素を取り入れ、日本の侘び寂びを落とし込んだ独自の美学を追求しています。

救いを求めるような切ない歌声が心を打つ#1"Fatal Words lie with me"、虚ろな歌声と荒涼としたノイズが孤独感を掻き立てる#2"虚像"、巧みなリズムワークにプログレッシブなセンスが光る#3"群青"、ノイズの嵐の中でキーボードとボーカルがなめらかに溶け合う#4"slow"。いずれも名曲です。

リリースパーティのライブは出音がヘヴィだったせいか、ややメタル寄りの印象を持ちましたが、音源はドリームポップやシューゲイズらしいゆう幽玄美も感じられて好印象。シューゲイズだけでなく、ゴシックやV系が好きな人にもオススメです。

現在サブスクは未配信。CDはライブ会場またはヨムキクノム ONLINE STOREで購入できます。

最新情報はnannouのSNSをチェック

nannou : Instagram

nannou : X

Vestige

Janis

Vestige

Janis

  • release date /
    2024-09-06
  • country /
    France
  • gerne /
    metalcore, post-hardcore, shoegaze, blackgaze
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フランスのモダンメタル╱シューゲイズ・バンドVestigeのデビューアルバム。

シンフォニックデスメタルバンドNarakaのメンバーであるThéodore Rondeau(Vo/Gt)、Pierre-André Krauzer(Ba)、Quentin Regnault(Dr)に新たにギタリストThomas Petitが加わり現在のラインナップとなりました。

ドロドロしたデスメタルだったNarakaから一転、本作ではメタルコア風にゴリゴリと刻むギターリフをベースに、煌めくアルペジオやアトモスフェリックなトレモロリフを巧みに加え、ポストハードコアやシューゲイズに接近したサウンドを開拓。Narakaではデス声がメインだったThéodore Rondeauは儚げなクリーンボーカルとスクリームを巧みに使い分け、楽曲にドラマティックな味わいを生み出しています。メタルとシューゲイズのクロスオーバーは、ブラックメタルやドゥームメタルの文脈で試みられることが多かっただけにVestigeのアプローチはなかなか新鮮でした。

#5“Automne Part.1”から#6“Automne Part.2 feat Neige (Alcest)”の流れは本作のハイライト。どちらもAlcestの3rdに通じる激しさと繊細さを兼ね備えた名曲かつThéodoreとNeigeの美しいボーカルを聴き比べることができる贅沢仕様。意図的にアコギを多用してAlcestに曲調を寄せているあたりにもNeige氏への深いリスペクトを感じさせますね。

シューゲイズとメタル両方のファンに刺さる魅力を備えた意欲作。まあ私に言わせれば靴を見るために頭を下げる動作はヘドバンみたいなものだし、シューゲイザーとメタラーはある意味で同族と思っていますが(笑)

Blurred City Lights

Overload

Blurred City Lights

Overload

  • release date /
    2024-09-06
  • country /
    UK, Poland
  • gerne /
    dream-pop, industrial, shoegaze, trip-hop
Light
Dark
Soft
Heavy
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Noisy
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Pop
Extreme
Light
Dark
Soft
Heavy
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Noisy
Slow
Fast
Pop
Extreme

元CURVE(現SPC ECO)のDean Garciaと、SPC ECOなどで彼と親交の深いポーランドのミュージシャンJarek Leskiewiczによるドリームポップ/トリップホップ・デュオの4thアルバム。

Rose Berlin(現SPC ECO)やBéatrix Méthéのボーカルをフィーチャーしたいくつかの曲はドリーミーでSPC ECOに近いものの、メインを担う男性ボーカルによって醸し出される退廃的なムードが最大の特徴。Massive AttackやDepeche Modeを彷彿とさせるダークなサウンドスケープに2人の虚ろな声が漂う様は、さながらオジサン2人連れの世界終末旅行。モノクロームの廃墟を彷徨い歩くような気分を味わうにはもってこいです。

完成度は高いものの、配信先はなぜかBandcampのみ。SPC ECOの最新作といい、Bandcampにこだわる理由が気になるところですね。

ちなみに名古屋のシューゲイズ・バンドBlurred City Lightsとは全く別物なので注意。併記する場合は混同を避けるために(JP)と付けるなどして区別することをオススメします。